検事長勤務延長閣議決定の撤回を求め,検察官の勤務延長制度導入に反対する弁護士共同アピール

1 2020年(令和2年)年1月31日,政府は,定年退官する予定だった東京高等検察庁検事長について,国家公務員法(以下「国公法」)第81条の3第1項を適用し,半年間勤務を延長することを閣議決定した。
2 しかし,準司法官として司法権の一翼を担う検察官は,公益の代表者として刑事手続を行い公訴権を独占するなど強力な権限を有し,その職務遂行には政治的中立性と独立性が求められる。そのため,検察官には,他の国家公務員と異なる裁判官に準じた身分保障が与えられている。
 このような職務と責任の特殊性に基づき,検察官については,定年制度の特例が検察庁法第22条に定められ,運用されてきた。同条は,国公法の定年制度の特別法であり,一般法である国公法上の定年制度やこれを前提とする勤務延長が検察官に適用される余地はない。国公法上の定年制度が導入された1981年(昭和56年)の国会審議においても,その旨の答弁が政府から繰り返しなされてきたし,実際に,今回の閣議決定以前に検察官に国公法上の勤務延長が適用された例はない。
 今回の閣議決定は,国公法及び検察庁法の関係条文の文言,その制定・改正の経緯及びこれまでの運用を無視しており,違法・無効である。政府によるかかる恣意的な法解釈は,わが国の民主主義や法治国家としてのあり方の根幹を揺るがすものである。
3 そもそも,検察官の勤務延長を政府の判断で可能とすること自体,政府による検察官の人事への介入を招きやすく,検察官の職務の政治的中立性と独立性が損なわれる恐れがある。
 過去の重大疑獄事件の例に明らかなように,検察官の職務遂行はしばしば政権との緊張関係をはらむが,検察官の勤務延長が政府によって恣意的に運用されれば,検察官の職務遂行の政治的中立性と独立性に重大な疑念が生じ,刑事司法の機能に深刻な影響を与え,ひいては日本国憲法の定める三権分立をも動揺させかねない。
 検察官の勤務延長を政府の判断で可能とすることには重大な問題があるといえる。
4 ところが,このような状況下で政府は,2020年(令和2年)年3月13日,あえて検察官の勤務延長制度を導入する国公法及び検察庁法改正案を国会に提出した。その内容は,検事長ら役職者の勤務延長を内閣・法務大臣の判断に委ねるものである。
 この改正案も,今回の閣議決定と同様,検察官の政治的中立性と独立性を脅かし,さらに政府が恒常的に検察官人事に介入できる仕組みを制度化するに等しいものであって、到底,看過できない。
5 私たち弁護士は,基本的人権と社会正義の実現を使命とする法律家として,違法な本件勤務延長の閣議決定の撤回を求めるとともに、国公法等の一部を改正する法律案中の検察官の定年ないし勤務延長に係る特例措置の部分に強く反対する。

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